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TOPジャーナルクラブ > ジャーナルクラブ 2014年

ジャーナルクラブ

2014年: 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月

 

当科で毎週行われている抄読会の内容を紹介します.

 

2014年12月16日 担当:猪倉 恭子

Cancer Cell. 2014 Oct 13;26(4):509-20. doi: 10.1016/j.ccr.2014.08.001.

Role of casein kinase 1A1 in the biology and targeted therapy of del(5q) MDS.

Schneider RK, Ademà V, Ebert BL, et al.

担当者コメント

Cacein kinase 1A1 gene(CSNK1A1)は、骨髄異形成症候群(MDS)の5q−症候群における第5染色体長腕の共通欠失領域(CDR)に存在する遺伝子で腫瘍抑制遺伝子と考えられている。筆者らはCsnk1a1をコンディショナルにノックアウトするマウスモデルを作成し、Csnk1a1遺伝子の生体における機能の評価を行った。Csnk1a1遺伝子を異型接合性(heterozygous)に欠失したハプロ不全(haploinsufficiency)の状態では、マウスの骨髄では造血幹細胞の増殖が認められ、また競合的造血再構築能を獲得することが分かった。一方、Csnk1a1遺伝子を同型接合性(homozygous)に欠失するとマウスの骨髄では造血不全を引き起こすことが分かった。また、Csnk1a1がheterozygousに不活性化されている細胞は、2つの正常なアリルをもつ細胞に比べてCSNK1阻害剤に鋭敏に反応することが示された。加えて、筆者らはシーケンス解析にて5q−症候群の患者の非欠失側アリルにCSNK1A1遺伝子変異を複数例で認めている。今回の解析によりCSNK1A1遺伝子は5q−症候群の病態形成において重要な役割を果たし、治療のターゲットになりうる可能性が示唆された。

 

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2014年12月9日 担当:池田 朋子

J Immunol. 2014 Oct 1;193(7):3288-95. doi: 10.4049/jimmunol.1401322.

Complement component C5a permits the coexistence of pathogenic Th17 cells and type I IFN in lupus.

Pawaria S, Ramani K, Biswas PS, et al.

担当者コメント

全身性エリテマトーデス(SLE)は、I型IFN(IFN-I)がB細胞及びTh細胞応答を誘導する自己免疫疾患である。最近、新たにTh細胞サブセットのTh17細胞が同定され、SLEの病因に関与していると報告された。しかし、IFN-IはIL-27依存的に産生され、Th17細胞の増殖を抑制するため、SLEのようにIFN-Iレベルの高い環境下で、どのようにTh17細胞分化が生じるかやTh17細胞の病原性は不明である。

本研究では、IFN-I媒介性IL-27産生を遮断し、マウスマクロファージ上のC5aRを活性化することによりTh17細胞の分化を可能にした。 IFN-I応答性マクロファージ上のC5aRの活性化は、PI3K / Akt経路を介したIRF-1媒介性IL-27遺伝子発現を阻害する。C5aR欠損マウスでは、IL-27発現が低いTh17細胞が増加し、野生型マウスと比較して、ループス腎炎を発症しにくい。ループスモデルマウスにおいても、C5aはマクロファージのIFN-I誘導性IL-27産生を抑制し、血清中のC5aのレベルが末梢血中のTh17細胞の頻度と相関した。

これらのデータは、SLEにおける病原性Th17応答の発生においてC5aは重要であることを示しており、C5aRの活性化を阻害することにより、SLEにおける病原性Th17-媒介性炎症病態を制御できる可能性が示唆された。

 

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2014年11月25日 担当:藤井 博司

J Exp Med. 2014 Sep 22;211(10):1969-76. doi: 10.1084/jem.20132522.

Genetic evidence for the role of plasmacytoid dendritic cells in systemic lupus erythematosus.

Sisirak V, Ganguly D, Reizis B, et al.

担当者コメント

全身性エリテマトーデス(SLE)は核酸に対する自己抗体が産生され、それらが組織に沈着することにより引き起こされる慢性炎症性疾患である。ヒト末梢血単核球のマイクロアレイの解析により、SLE患者の血球細胞には健常人に比べてIFN (type I IFN) 誘導遺伝子が多く発現されており、IFN signatureと呼ばれている。このことに基づいて、IFN、IFN受容体を標的とした治療法がSLEに対する治療として応用されつつある。これらのIFNの産生細胞は主としてplasmacytoid dendritic cell (pDC)と考えられいるが、SLEの発症における役割はわかっていない。本論文では、pDCに特異性の高い転写因子E2-2 (Tcf4)のhaplodeficientなマウスを作製し、それらをループスモデルマウスであるTlr7transgenic mouse、B6.Sle1.Sle3 congenic mouseと掛け合わせることにより、SLEの発症におけるpDCの役割を検討した。Tcf4 haplodeficientにすることにより(pDCが消失する)抗DNA抗体、糸球体腎炎などのSLEに伴う異常が軽減した。マイクロアレイの結果からは、Tcf4 haplodeficiencyによりgerminal center(GC)関連の遺伝子が減少しており(IFN signatureは差なし)、脾臓におけるGCも減少していた。本論文の結果から、pDC標的療法がIFN関連経路阻害以外の機序で作用し、SLEの治療に応用できる可能性が示唆された。

 

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2014年11月18日 担当:福原 規子

Nature. 2014 Sep 28. doi: 10.1038/nature13765.

Loss of signalling via Gα13 in germinal centre B-cell-derived lymphoma.

Muppidi JR, Schmitz R, Cyster JG, et al.

担当者コメント

Germinal center B cell-like DLBCL(GCB-DLBCL)において、シグナル伝達経路の脱制御やその進展につながる要因は十分に解明されていない。本研究では、マウスにてスフィンゴシン-1-リン酸受容体-2(S1PR2)、Gα12及びGα13が、胚中心B細胞の増殖及び分化抑制を促進することを検討した。 GCB-DLBCL検体を用いたdeep sequencing解析により、Gα13コードするGNA13遺伝子及びS1PR2を含む多数の遺伝子変異が明らかになった。今回、GCB-DLBCLに関連したS1PR2変異により、Akt及び遊走阻害機能が抑制されることが示された。 Gα13欠損マウスを用いた胚中心B細胞およびGCB-DLBCL細胞では、S1PからのAktリン酸化及びmigrationを抑制することができず、Gα13欠損マウスにGCB derived lymphomaの発症を認めた。胚中心B細胞は通常リンパ組織に留まるものであり、Gα13欠損により胚中心B細胞の末梢血中へのdisseminationを認めたことは注目すべきことである。 GCB-DLBCL細胞株では、しばしばGα13エフェクターであるARHGEF1変異を認めるが、Arhgef1欠損もまた胚中心B細胞のdisseminationに寄与することが示された。 Gα13欠損マウスにS1PR2を欠失させたマウスでは、P2RY8(GCB-DLBCL、burkitt lymphomaに発現するorphan receptor)により、胚中心B細胞の増殖抑制及びGα13による制御を促進することが示された。本研究により、Gα13による伝達経路は、胚中心B細胞の増殖及びdissemination抑制を制御することが示された。

GNA13 (17q24.1); guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha 13

Gα12ファミリーにはGα12とGα13があり、共通のエフェクターを介したシグナル伝達以外にも特異的シグナル伝達が報告されている。ノックアウトマウスでは、Gα12は致死であり、Gα13は生まれる。Gα12ファミリーのエフェクターは、低分子量Gタンパク質、Rhoを活性化するRGS-RhoGEFである。

 

 

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2014年11月11日 担当:藤原 亨

Nat Med. 2014 Nov;20(11):1315-20. doi: 10.1038/nm.3707.

Megakaryocytes regulate hematopoietic stem cell quiescence through CXCL4 secretion.

Bruns I, Lucas D, Frenette PS, et al.

担当者コメント

 生体内において、造血幹細胞(HSC)の分化の調節・自己複製能の維持を行うための特別な場所をNiche(ニッチ)と呼ぶ。脊椎動物におけるHSCニッチは骨髄にあり、骨芽細胞、血管内皮細胞、CAR細胞(CXCL12-abundant reticular cell)、Nestin陽性細胞などの様々なストローマ細胞がその候補と考えられている。さらに近年、休止状態にあるHSCは骨髄内の細動脈と特異的に関連することが報告された(Nature 2013)。
 これまでの報告によると、HSCニッチを構成する細胞は間葉系幹細胞をはじめとした非造血細胞であると考えられてきた。しかし近年、HSCから派生した造血細胞の1つである巨核球がHSCの機能を制御しうることがいくつかの研究から示唆されてきた。
 本研究においては、巨核球が休止状態のHSCを制御する新たなニッチを形成することを以下の実験により明らかとした。

 著者らは、@骨髄内HSCの約20%は巨核球と接して存在している点(Figure 1)、Ain vivoにおける巨核球の減少は機能的なHSCの頻度を増加させる点(Figure 2)、B巨核球で特異的に発現しているCXCL4がHSCの休止を促すための重要なメディエーターである可能性(Figure 3)を明らかとした。さらに、HSCの休止を促す巨核球のニッチは、上述の細動脈とは独立して存在しうる点(Figure 4)も明らかとした。

 今回の研究成果及びその意義は以下の3点にまとめられる。
@ 細動脈とは独立したHSCの休止状態を制御するニッチの同定
A 造血細胞を介してHSCニッチを制御するfeedback機構を明らかとした
B MDS、ITP、MPNなどの病態解明、造血幹細胞移植後の回復を促進するための標的療法に向けた糸口になりうる

 

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2014年11月4日 担当:長谷川 慎

Nature. 2014 Aug 7;512(7512):78-81. doi: 10.1038/nature13383. Epub 2014 Jun 22.

Neuropathy of haematopoietic stem cell niche is essential for myeloproliferative neoplasms.

Arranz L, Sánchez-Aguilera A, Méndez-Ferrer S, et al.

担当者コメント

骨髄増殖性腫瘍(MPN)は造血幹細胞(HSC)の変異により発症する疾患である.MPN患者の大半は、造血幹細胞にJanus kinase 2(JAK2)の後天的変異を有しており、この変異JAK2によりkinaseが異常に活性化し、細胞増殖が制御不能になるとされる.このような病態に骨髄微小環境が寄与している可能性がある.著者らのグループは、交感神経系支配を受けるnestin陽性間葉系幹細胞(MSC)がHSCを正常な状態に制御していることを以前報告している.本論文ではその制御回路の破綻がMPNの病態形成に強く関連していることを示した. MPN患者骨髄およびヒトJAK2(V617F)変異を発現させたマウスの骨髄では、全例でSchwann細胞とnestin陽性MSCを支持する交感神経線維が減少していた.しかし予想外なことに、MSCが減少する原因はMSCが線維芽細胞や骨芽細胞へ分化するためではなく、変異HSCが産生するIL-1βにより骨髄内の神経が損傷し、Schwann細胞が減少するためであった.また、in vivoでnestin陽性細胞もしくはそれらが産生するCXCL12を減少させると、変異HSCの数が増加し、MPNの進行速度が上昇した.逆に、神経保護剤もしくは交感神経刺激薬の投与を行うと、変異HSCの増殖が抑制された.β3アドレナリン受容体アゴニストによる治療は、交感神経系によるnestin陽性MSCの制御を回復させMSCの減少を防ぎ、間接的に白血病幹細胞の数を減らすことによりMPNの進行を抑制した.これら結果は、変異HSCにより引き起こされる幹細胞ニッチの損傷がMPNの発症に強く関与しており、ニッチを形成するMSCおよびそれらを制御する神経がMPNの治療標的となりうる可能性を示唆している.

 

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2014年10月21日 担当:城田 祐子

Immunity. 2014 Sep 18;41(3):465-77. doi: 10.1016/j.immuni.2014.08.006.

Human dermal CD14+ cells are a transient population of monocyte-derived macrophages.

McGovern N, Schlitzer A, Haniffa M, et al.

担当者コメント

DC, monocyte, macrophageは免疫と寛容において重大な役割を持っている。Mononuclear phagocyte network機構は進化の過程で受け継がれている。ヒト組織CD141(hi)XCR1(+)CLEC9A(+)DCおよびCD1c(+)DCは、マウスのCD103(+)DCおよびCD64(-)CD11b(+)DCに相応する。さらに、ヒト組織では、CD14+細胞があり、この細胞はこれまでにDCとして考えられてきた。マウスでこれに相応する細胞は不明であった。
筆者らは、皮膚のCD14(+)細胞は6日以内の短い半減期の単球由来macrophageであることを実証しました。減衰と再構成のkineticsにおいてin vivoで血中CD14+細胞 と皮膚CD14+細胞がprecursor-progenyの関係にあることがわかった。
ヒトの皮膚のCD14+細胞は、マウスにおいてCD11b+CD64+の単球由来macrophageに相応する。ヒトとマウスのmonocyteおよびmacrophageは高度に受け継がれた遺伝子転写物によって定義され、それはDCとは異なるものだった。
ヒト組織での定常状態において、単球由来macrophageを証明することは、ヒトおよびマウスのMononuclear phagocyte network機構は進化の過程で受け継がれていることを示唆する。

 

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2014年10月14日 担当:中村 恭平

Cancer Cell. 2014 Jun 16;25(6):809-21. doi: 10.1016/j.ccr.2014.04.026.

B Cells Regulate Macrophage Phenotype and Response to Chemotherapy in Squamous Carcinomas.

Affara NI, Ruffell B, Coussens LM, et al.

担当者コメント

B細胞の抗体産生は、ウイルス感染をはじめとする感染症の生体防御においては必須の役割を担っている。一方で個体に発生した悪性腫瘍に対して産生される抗体は、腫瘍を制御する免疫機構として機能せず、むしろ腫瘍の増大を支持する可能性が報告されてきている。これまで筆者らのグループはケラチノサイトにおいてヒトパピローマウイルスのoncoprotein HPV16を強制発現する扁平上皮癌のモデルマウスを用いて、ケラチンやラミニンに対する自己抗体の出現と癌周囲組織に免疫複合体の沈着が起こることを報告した。そして癌組織に沈着する免疫複合体はFc受容体を有するミエロイド系細胞を活性化し、発癌を促進する環境を生み出すことを報告した(Cancer Cell 2010)。今回、筆者らはB細胞を標的とした治療が扁平上皮癌の治療戦略となる可能性を検討した。プラチナ製剤やタキサン系製剤に、抗CD20抗体を組み合わせた治療が腫瘍の増大を顕著に抑制することを見出した。抗CD20抗体による免疫複体沈着の低下は、腫瘍関連マクロファージの性質を変化させ、CCL5-CCR5を介したCD8陽性T細胞の腫瘍組織への動員を増やすことで抗腫瘍免疫応答を活性化させていると考えられた。本論文によってB細胞を標的とした固形腫瘍の免疫療法としての可能性を提唱するとともに、癌に対する自己抗体、免疫複合体の形成が癌の進展に有利な環境を形成していることが分かった。

 

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2014年10月7日 担当:斎藤 陽

Nature. 2014 Jun 12;510(7504):235-40. doi: 10.1038/nature13420.

Targeted genome editing in human repopulating haematopoietic stem cells.

Genovese P, Schiroli G, Naldini L, et al.

担当者コメント

 人工ヌクレアーゼを用いた標的ゲノム編集技術の登場によって、領域特異的な遺伝子導入や遺伝子修正は、遺伝子治療への応用を目指せるようになってきた。しかしながら、この技術を造血幹細胞へ応用することは容易ではなかった。本論文ではまず、遺伝子輸送に対する寛容性の乏しさと、ヒトHSCに対する、相同性に基づいたDNA修復機構による標的ゲノム編集技術が十分発達していないことを述べている。著者らは、遺伝子送達プラットフォームと培養条件の調整によってこれらの障壁を乗り越え、移植マウスが長期に多系統の血球を再構築できることを示すことで、ヒトHSCに標的ゲノムの導入がなされたことを厳密に証明した。そして、健常ドナーと、X連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1)の患者に由来するHSCのIL2RG遺伝子へ修正用のcDNAを挿入することで、この戦略が治療に使える可能性を示した。そして、遺伝子編集されたHSCは機能を持つリンパ系細胞を生み出し、それらは細胞を破壊するIL2RG変異を持つリンパ系細胞に対して、増殖に関する選択的な優位性を示した。これらの結果はSCID-X1や他の遺伝性疾患対する新たな治療法を開拓すると考えられる。

 著者らによるプロトコールの改善によりヒト造血幹細胞に対する領域特異的な標的ゲノム編集が可能になったことで、前世代のウイルスベクターを用いた遺伝子治療に伴うリスクを克服した、より安全性の高い遺伝子治療が現実的となったと考えられ、大変興味深い。

 

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2014年9月30日 担当:近藤 愛子

Cell Stem Cell. 2014 Aug 7;15(2):169-84. doi: 10.1016/j.stem.2014.06.002.

Glucose and Glutamine Metabolism Regulate Human Hematopoietic Stem Cell Lineage Specification

Oburoglu L, Tardito S, Taylor N, et al.

担当者コメント

 ここ数十年の多くの研究により、造血幹細胞(HSC)の分化・増殖におけるサイトカインや微小環境の役割が解明されてきた。しかし、HSCの維持・増殖における調節因子としての重要な栄養素やその代謝に関してはほとんど明らかになっていない。

 グルコース合成や細胞表面のグルコーストランスポーターの転位によって、グルコース代謝が増加することが造血前駆細胞の活性化や細胞周期に重要であると考えられている

 活動していないHSCの代謝状態はHSCの自己再生に重要な役割を果たしているが、どのようなmetabolic parameterがHSCのlineage決定をしているのか明らかではない。この論文では、ヒトとマウスのHSCのerthroid lineageへの分化誘導はグルタミン代謝に依存していることを示している。ASCT2グルタミントランスポーターとグルタミン代謝の活性化がHSCの赤血球分化には必要である。グルタミン代謝を阻害するとエリスロポエチン(EPO)刺激を受けているHSCでも骨髄単球系へと分化し、溶血性貧血のようなストレス状況下で生体内のHSC反応や赤血球分化を変えてしまう。HSCの赤血球分化はグルタミン依存性のヌクレオチド合成が必要である。グルタミン異化が制限されている時、外因性のヌクレオシドはヒトのHSCの赤血球分化を補助し、グルコース刺激によるヌクレオチド合成は赤血球分化をさらに促進する。

 ヌクレオチド合成のためのグルタミンとグルコースの安定供給がHSCのlineage決定を調整している。

 

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2014年9月29日 担当:小林 匡洋

Nature. 2014 Feb 20;506(7488):328-33. doi: 10.1038/nature13038.

Identification of pre-leukaemic haematopoietic stem cells in acute leukaemia.

Shlush LI, Zandi S, Dick JE, et al.

担当者コメント

多くの遺伝子変異が急性骨髄性白血病で報告されているが、遺伝子変異の因果関係については不明な点が多い。急性骨髄性白血病患者の検体を用いて、これまでの報告から白血病で変異が報告されている代表的な103の遺伝子について、白血病細胞および成熟細胞での遺伝子変異を解析した。これらの遺伝子のうち、DNMT3A、IDH2遺伝子変異は、白血病細胞と成熟細胞の両者で認められた。造血幹細胞、前駆細胞、成熟細胞でDNMT3A 変異を高頻度に認めた症例では、白血病細胞で DNMT3A 変異とNPM1 変異を同時に認めた。 DNMT3A 変異を持つ造血幹細胞の移植片は、正常造血幹細胞を上回る再構成能を示した。DNMT3A 変異を持つ造血幹細胞は前白血病造血幹細胞と考えられる。寛解した症例の造血幹細胞、前駆細胞、成熟細胞にDNMT3A 変異が残存した。 DNMT3A 変異が造血幹細胞分画に生じ、それがクローン性に増殖した前白血病造血幹細胞として存在を維持すると考えられる。さらに将来、NPM1変異等が加わり、白血病造血幹細胞になる可能性がある。今後、DNMT3A変異、特定の遺伝子近傍でのDNAメチル化異常、NPM1変異、白血化の関連が注目される。将来の臨床応用については、遺伝子変異を重ねる前の段階、もしくは寛解の段階で前白血病クローンを検出することの有用性や、白血化を仲介する因子を標的とした特異的治療などが挙げられる。

 

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2014年9月16日 担当:兼平 雅彦

Cell Stem Cell. 2014 Sep 4;15(3):295-309. doi: 10.1016/j.stem.2014.07.003.

The Developmental Potential of iPSCs Is Greatly Influenced by Reprogramming Factor Selection.

Buganim Y, Markoulaki S, Jaenisch R, et al.

担当者コメント

 iPS細胞は、線維芽細胞などの体細胞へ山中因子(Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc)を遺伝子導入することで誘導される多能性幹細胞であるが、ES細胞に比べ、分化能やマウス個体形成能にバラつきが認められるなどの問題点が指摘されていた。本論文で筆者らは、Sall4, Nanog, Esrrb, Lin28の4因子をマウス胎子線維芽細胞へ導入することで、従来よりも高品質のiPS細胞が誘導可能であることを示している。

 筆者らが新たに誘導したiPS細胞(SNEL-iPSC)は、従来のiPS細胞(OSKM-iPSC)に比べ、四倍体胚補完法(4n embryo complementation assay)により、約6倍の効率で生存マウスが作出可能であり、ES細胞とほぼ同等であった。SNEL-iPSC とOSKM-iPSCの間には、ES細胞で認められるkey master regulator(Oct4, Sox2, Esrrbなど)の発現やsuper-enhancerの存在に違いは見られないが、OSKM-iPSC はSNEL-iPSCに比べ、DNA損傷の指標であるリン酸化γH2A.Xのゲノムへの蓄積や、8番染色体のトリソミーが高頻度で認められた。このことは、SNEL-iPSCはOSKM-iPSCに比べ、genomic stressやゲノム不安定性に対し抵抗性を有することを示している。

 従来法に比べ、誘導効率が低く、誘導に時間を要することや、ヒト線維芽細胞では成功していないなど、改良すべき点はあるものの、新たなhigh qualityのiPS細胞誘導法の可能性が示されたという点で興味深い。

 

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2014年9月9日 担当:藤原 亨

J Clin Invest. 2014 Aug 26. pii: 76979. doi: 10.1172/JCI76979.

TMEM14C is required for erythroid mitochondrial heme metabolism.

Yien YY, Robiedo RF, Paw BH, et al.

担当者コメント

 ヘムは全ての細胞で必須の分子であるが、その主な産生細胞は赤芽球と肝細胞である。ヘム生合成の障害があると、ヘモグロビン合成、組織への酸素輸送、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化、薬物代謝等に重大な障害を生じ、その結果、鉄芽球性貧血症あるいはポルフィリン症を発症する。これまでのところ、ヘム生合成に関わる8つの酵素群については非常に多くのことが明らかとなっている。しかし一方で、ヘムとその前駆体のミトコンドリア内外の輸送メカニズムについては不明な点が多い。

 著者らのグループは、ミトコンドリア関連遺伝子群を対象とした網羅的な解析から、ミトコンドリア膜蛋白質をコードする遺伝子Transmembrane protein 14C (TMEM14C)を同定した(Cell Stem Cell, 2009)。本遺伝子は赤血球で高い発現を示し、ゼブラフイッシュにおけるノックアウトにより貧血を呈することを明らかとした。

 今回の検討では、1)TMEM14Cはミトコンドリアの内膜に局在している点、2)Tmem14cノックダウンマウスはヘム合成障害により著明な貧血を呈する点、3)Tmem14cノックダウン及びノックアウト細胞株を用いた検討から、Protoporphyrinogen IXをミトコンドリア内のマトリックスに輸送するのに重要である可能性を明らかとした。しかしながら、肝臓などの他組織のヘム生合成におけるTMEM14Cの意義については不明である。

 現在のところ、TMEM14C遺伝子の変異とヒト疾患の関与は報告されていないが、原因不明の貧血症あるいはポルフィリン症においては本遺伝子の異常の可能性についても念頭におく必要があると考えられる。

 

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2014年9月2日 担当:鴨川 由起子

Science. 2014 Feb 21;343(6173):885-8. doi: 10.1126/science.1247663.

Growth factors engineered for super-affinity to the extracellular matrix enhance tissue healing.

Martino MM, Briquez PS, Hubbell JA, et al.

担当者コメント

 創傷治癒には細胞増殖因子(Growth factor : GF)が強く関与しており、代表的なものに、血管新生を促進する vascular endothelial growth factor (VEGF), 骨新生を促進する bone morphogenetic protein-2 (BMP-2), 肉芽組織の形成と幹細胞の増殖に関与する platelet-derived growth factor-BB (PDGF-BB)などがある。

 GFの再生医療への応用が長年期待されているが、安全性、コスト、投与量などの問題があり、限られた分野でしか実現できていない。

 多様なGFのsignalingは細胞外マトリックス(extracellular matrix : ECM)と接着することで調整されており、ECMへの接着に関わる蛋白を調べることで、接着能を強め、より単純なdelivery systemを供給することができると考えた。

 まず、25種類のGF(VEGF,P1GF,PDGF,FGF,TGF-β,BMPなど)にECM(Fibronectin, Fibrinogen, TenascinC, Osteopontin, Vitronectin, Collagen )を接着させ、抗ECM抗体を付加し、免疫吸着法で吸光度を測定した。P1GF-2は6種類のECMすべてにおいて吸光度が一番高かったが、P1GF-1は吸光度が低かった。この2種類のアミノ酸配列を調べたところC末端付近でのP1GF-2123-144(RRPKGRGKRRREKQRPTDCHL)のドメインの違いだけであった。P1GF-2123-144がECMとの接着に関与すると考えられた。

 VEGF-A、PDGF-BB、BMP-2にそれぞれワイルドタイプとP1GF-2123-144を付加させたもので吸光度を測定したが、3種類ともワイルドタイプのものよりP1GF-2123-144を付加させたものの方が吸光度が低かった。

 生後10-12週のDMモデルマウスの背中に直径6mmのパンチバイオプシーを施行して、直接傷口にGF(VEGF-A/ P1GF-2123-144+PDGF-BB/ P1GF-2123-144, VEGF-A165+PDGF-BB, Saline)を塗布し、治癒の様子をみた。P1GF-2123-144を付加したものが圧倒的に治癒するのが早かった。また、VEGF-Aは血管透過性を亢進させるが、P1GF-2123-144を付加したものはワイルドタイプのものより血管透過性の亢進を抑制した。

 生後10-12週のratの頭蓋骨にドリルで直径6mmの穴をあけ、直接GF(BMP-2/ P1GF-2123-144+PDGF-BB/ P1GF-2123-144, BMP-2+PDGF-BB, fibrin only)を塗布した。4週間後にと殺し、骨新生の範囲と頭蓋骨のvolumeを測定した。骨新生の範囲と頭蓋骨のvolumeともにP1GF-2123-144を付加したものの方がワイルドタイプより圧倒的に大きかった。

 PIGF123-144がECMに異常に強く接着することがわかった。このdomainを他のGFに付加することで、劇的にその効果を増大させ、皮膚の創傷治癒と骨新生に対し、臨床的な効果出現までの投与量を減量することができると考えられる。

 また、VEGF-Aはその血管透過性亢進作用により臨床的な応用に限界があったが、このdomainを付加することで、可能性の場が拡がった。今後、再生医療への応用が期待できる。

 

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2014年7月22日 担当:加藤 浩貴

Nature. 2014 Jun 19;510(7505):393-6. doi: 10.1038/nature13255.

mTORC1 controls the adaptive transition of quiescent stem cells from G0 to G(Alert).

Rodgers JT, King KY, Rando TA, et al.

担当者コメント

筆者らは筋組織の幹細胞と現在考えられている衛星細胞(satellite cells; SCs)の筋傷害組織におけるactivation(quiescence state→activated state)に関する研究を行うなかで、傷害を受けた組織と離れた組織にあるSCsのユニークな特徴を見つけそれらの細胞が静止期のなかでも細胞周期に近いGAlertの状態にあると結論付けた。
幹細胞は必要に応じてquiescence state(G0)とcell cycle(G1-S-G2-M)の状態を調節しなければならない。しかしながら幹細胞がG0期からG1期への移行を調節する機構は未だ不明な点が多く、細胞周期と比較し静止期にいる細胞の状態変化に関する検討は少ない。今回、組織傷害を与えたマウス(Pax7CreER/+;Rosa26EYFP/+)の筋組織から衛星細胞(EYFP+)を解析した所, 組織傷害を受けた側の衛星細胞(activated satellite cells; ASCs)と対側の衛星細胞(contralateral satellite cells; CSCs)に組織傷害を受けていないマウスの衛星細胞(quiescence satellite cells; QSCs)と比較して細胞の大きさ, 細胞分裂への時間, 転写活性, ミトコンドリア代謝などに関する検討等からより細胞増殖活性の高いACSsに近い特徴があることが示された(Pax7,MyoD,Ki67,MyoGの発現からは依然G0期にあると考えられる)。この特徴はmTORC1を構成するRptorのknock outにてchancelされmTORC1 inhibitorであるTSC1のknock outのみでも認められることから, GAlertはmTORC1によって調整されていることが示唆された。また組織傷害の時に活性化されるhepatocyte growth factorのreceptorであるcMET knock outではQSCsの特徴がchancelされたことから、離れた部分の組織傷害に対するQSCsの応答にcMETが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。GAlert にいる細胞は次の障害に対する反応が早いことも示されGAlert の生理的意義の一つと考えられた。
今回の研究は、幹細胞の静止期における状態の理解を深め、同じ中胚葉由来である造血幹細胞の静止期/細胞周期制御機構の理解の一助になるものと考えられた(本研究でも傷害を受けたマウスのlong-term haematopoietic stem cellのINF-γに対する高い応答性が示されている)。

 

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2014年7月15日 担当:大西 康

Science. 2014 May 23;344(6186):921-5. doi: 10.1126/science.1252510.

The Cellular and Molecular Origin of Tumor-Associated Macrophages.

Franklin RA, Liao W, Li MO, et al.

担当者コメント

筆者らは乳癌発症モデルであるPyMTマウスを用いて、腫瘍に浸潤したMyeloid cellを解析し、CD11cやMHC IIという樹状細胞(DC)マーカーに加えて、F4/80というマクロファージのマーカーを発現する細胞集団をTumor-associated Macrophage (TAM)と呼び、詳細に解析した。DCやマクロファージのImmGen Projectのデータを参照し、この細胞集団の遺伝子発現プロファイルを解析することで、TAMはDCではなくマクロファージに分類されることを示している。実際にTAMはDC特異的な転写因子であるZbtb46の発現が低く、Mafbの発現が高い。TAMの細胞表面抗原に関しても、DC markerは陰性でCD64やMerTKなどのマクロファージmarkerを発現していた。
TAMはCCR2+単球から分化するが、Ki67発現割合が高く、EdU取り込みもmammary tissue macrophage (MTM)より高い。これらの所見はTAMが高い増殖能を有することを示唆する。また、TAMはM2マクロファージ(alternatively activated macrophage, AAM)とは異なる遺伝子発現を示し、CD11b (Itgam)は低く、Vcam1が高い。また、IL-4非依存性である点もAAMとは異なる。
さらに、TAMの遺伝子発現からNotch signaling pathwayとの関連が示された。DCではRBPJがNotch signalingに重要な役割を果たすことが知られている。筆者らはCD11ccre RBPJfl/fl PyMTマウスを作成し、このマウスでTAMが選択的に欠損(減少)していることを示している。PyMTマウスの腫瘍に浸潤するCD8+T細胞の多くがPD-1を発現しており、Granzyme Bを発現するものは少なかった。しかし、TAMが減少し、腫瘍量が減少するCD11ccre RBPJfl/flmice x PyMTマウスでは、PD-1+CD8+Tが減少し、GzmB+CD8+Tが増加していた。
TAMはがん免疫療法の新たな標的となりうるかもしれない。

 

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2014年7月8日 担当:猪倉 恭子

J Exp Med. 2013 Nov 18;210(12):2627-39. doi: 10.1084/jem.20131144.

Concurrent loss of Ezh2 and Tet2 cooperates in the pathogenesis of myelodysplastic disorders.

Muto T, Sashida G, Iwama A, et al.

担当者コメント

ポリコーム群(PcG)遺伝子はヒストン修飾を介してエピジェネティックに遺伝子発現を制御しており、造血幹細胞においても重要な機能を有することが分かっている。EZH2はPcG遺伝子の一員でありヒストンH3 のリジン27(H3K27)のメチル化を促進し、遺伝子の発現を抑制すると考えられている。
今日、EZH2やASXL1といったPcG遺伝子の機能喪失型変異が骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)の患者でしばしば認められている。造血器腫瘍においてPcG遺伝子は癌抑制遺伝子として機能している事が推察されるが、動物モデルによって証明した研究は現在のところ報告されていない。そこで筆者らは、Ezh2欠損マウスを作製し、Ezh2単独の欠損でもMDS/MPN様の疾患を引き起こすことを示している。また、MDS、MDS関連疾患の患者骨髄細胞を用いて施行された次世代シーケンサーによる解析でEZH2遺伝子変異とTET2変異がしばしば共存している事から、Ezh2欠損マウスとTet2低発現マウスの2種類の遺伝子改変を併せ持つコンパウンドマウスを作製した。コンパウンドマウスはMDS/MPNだけでなくMDS様の病態もきたし、病勢の進行も早かった。また、Ezh2欠損マウスとMDS/MPNおよびMDSを発症したコンパウンドマウスのprogenitor細胞を用いてのクロマチン免疫沈降シーケンシングとDNAマイクロアレイの結果からは、Ezh2の欠損により直接的なPcG複合体の標的癌遺伝子群の発現抑制が解除されることが確認された。その一方で、Ezh1による代償作用でhomeobox, paired-box, T-box, forkhead, Gata遺伝子ファミリー、zink finger DNA結合タンパクなどの典型的な発生・分化制御遺伝子の転写抑制が維持されることが確認された。Ezh2は骨髄系疾患において癌抑制遺伝子として機能し、またTet2遺伝子変異など他の遺伝子変異と強調して機能することが示された。

 

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2014年6月24日 担当:池田 朋子

J Immunol. 2014 Jun 18. pii: 1302455. [Epub ahead of print]

Humanized Mice as a Model for Aberrant Responses in Human T Cell Immunotherapy

Vudattu NK, Waldron-Lynch F, Herold KC, et al.

担当者コメント

これまで、ヒト幹細胞で再構成した免疫欠損マウスを用いてヒトの免疫応答の分析はされてきたが、病理学的プロセスのメカニズムを分析することができる自己免疫疾患のモデルは存在していない。
筆者らは、抗CTLA-4モノクローナル抗体(イピリムマブ)を用いて、肝炎、副腎炎、唾液腺炎、抗核抗体、および体重減少を特徴とする自己免疫疾患を発症する「ヒト化」マウスを再構成し、T細胞の活性化やサイトカイン産生など自己免疫の活性化に関与し、APCの増大を誘導することを見出した。
イピリムマブ投与マウスでは、抗CD3モノクローナル抗体(テプリズマブ)を同時投与した場合、 肝炎や抗核抗体の有意な発現は見られず、体重減少も生じなかった。また、テプリズマブの効果は、T細胞増殖および活性化阻害、IFN-gやTNF-αの産生抑制、マクロファージ浸潤およびイピリムマブ誘導性IP-10の放出阻害にあった。
筆者らは、生体内でのヒト自己免疫疾患モデルを示しており、ヒト化マウスは患者に使用される生物製剤の機構を理解するのに有用であり得る。肝炎やリンパ節腫脹、および他の炎症性病態は、ヒトにおけるイピリムマブを用いた治療の副作用であり、本研究では、これらの免疫機構を分析することによりヒトの自己免疫疾患の新たな治療法の開発に寄与できる可能性が示唆された。

 

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2014年6月10日 担当:渡部 龍

N Engl J Med. 2014 Mar 6;370(10):911-20. doi: 10.1056/NEJMoa1307361.

Early-onset stroke and vasculopathy associated with mutations in ADA2

Zhou Q, Yang D, Aksentijevich I, et al.

担当者コメント

【背景・目的】間欠的な発熱・再発性ラクナ梗塞・皮疹・肝脾腫・全身性血管炎を呈した3症例の、原因遺伝子を明らかにする。【方法】 その3症例と、病気を有さない親から全ゲノムシークエンスを行った。次に、同様の表現系を有する3症例、PNの兄弟例、小血管炎の1例の候補遺伝子シークエンスを行った。【結果】9症例全例でAdenosine deaminase 2(ADA2)をコードするCECR1(Cat eye syndrome chromosome region, candidate 1)の異常を見出した。これらの患者では血漿中のADA2の活性は著明に低下しており、血管内皮の活性化と炎症が見られた。ゼブラフィッシュのADA2ホモログに対するノックアウトにより頭蓋内出血が見られた。【結論】 CECR1の機能喪失型変異は血管炎病態を引き起こし、脳出血や全身性血管炎と関係している。

 

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2014年5月27日 担当:藤井 博司

Nat Med 2014 May;20(5):503-10. doi: 10.1038/nm.3521.

Essential role for autophagy in the maintenance of immunological memory against influenza infection.

Chen M, Hong MJ, Wang J, et al.

担当者コメント

免疫系における長期に及ぶ“メモリー”機能とは、一度抗原暴露を受けた後に同じ病原体(抗原)に対して迅速で強力な反応を起こせることをいう。ワクチンは、免疫系のメモリー機能を利用してヒトを感染から防御するのに用いられてきた。オートファジーは免疫系における細胞生存の維持に重要であることがわかってきているが、メモリーB細胞の生存維持における役割は不明である。本研究ではB細胞特異的にAtg7をノックアウトしたマウスを用いて、抗体反応におけるB細胞のオートファジーの意義を調べた。ハプテンである4-hydroxy-3-nitrophenylacetyl、インフルエンザに対する1回目の免疫反応は、B細胞オートファジーが欠損していても野生型マウスと同様の反応を示したが、2回目の反応は有意に低下しており、細胞死によるメモリーB細胞数の低下も認められた。オートファジーによるB細胞生存維持の機序は、ミトファジーによる、ミトコンドリア由来の活性酸素の産生量と活性酸素による脂質酸化の調節であることが示唆された。今回の結果により、メモリーB細胞の生存と生体に防御的な抗体反応の維持にオートファジーが重要であることが示されたが、このことは効果的なワクチンデザインの一助になるかもしれない。

 

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2014年5月13日 担当:長谷川 慎

Nature. 2014 Apr 24;508(7497):536-40. doi: 10.1038/nature13071.

Foxc1 is a critical regulator of haematopoietic stem/progenitor cell niche formation.

Omatsu Y, Seike M, Nagasawa T, et al.

担当者コメント

 造血幹細胞・前駆細胞は骨髄ニッチとして知られる特殊な微小環境によって維持されている。多くの研究から、骨髄ニッチを構成する細胞として多種多様な候補が挙げられているが、ニッチを形成する分子学的機序に関しては未だ不明な点が多い。
 今回筆者らは、骨髄ニッチ候補の1つであるCXC chemokine ligand (CXCL) 12-abundant reticular (CAR) cellsにおいて、転写因子Foxc1が胎生期から成体まで強く発現していることを発見した。Foxc1を胎生期から全間葉系細胞もしくはCAR細胞単独で欠損させた場合のいずれにおいても、骨芽細胞は正常だが造血幹細胞・前駆細胞は著明に減少し、骨髄腔は脂肪細胞で占められた。成体マウスにおいてFoxc1を欠損させると、造血幹細胞・前駆細胞の減少とCAR細胞でのCXCL12・stem cell factor (SCF)の減少がみられたが、脂肪髄化は起こらなかった。これらのデータから、Foxc1はCAR前駆細胞から脂肪細胞への分化を抑制し、またCXCL12やSCFの発現を上昇させCAR細胞への分化を促進する機能を持つことが示唆された。今回の研究から、Foxc1は造血幹細胞・前駆細胞の間葉系ニッチの発達と維持に重要な転写因子であることが示された。

 

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2014年4月15日 担当:中村 恭平

Science 2013 Nov 22;342(6161):971-6. doi: 10.1126/science.1240537.

The intestinal microbiota modulates the anticancer immune effects of cyclophosphamide

Viaud S, Saccheri F, Mignot G, et al.

担当者コメント

 近年、腸内細菌叢の恒常性は、制御性T細胞をはじめとする免疫抑制細胞の誘導やTh17細胞の誘導に深く関与しており、腸内細菌叢の質的・量的な攪乱“Dysbosis”は、炎症免疫応答に大きな影響を与えることが分かってきた。
 Cyclophosphamide(CTX)は、アルキル化を介したDNA合成阻害を機序とする古典的な抗癌剤であるが、今回筆者らは単にCTXが直接がん細胞に作用するのみならず、腸内細菌叢のDysbosisをもたらし、腫瘍免疫応答を増強させることで抗腫瘍効果をもたらしていることを明らかにした。CTXは、グラム陽性球菌を中心とした腸内細菌叢のBacterial translocationをもたらし、リンパ組織にてpathological Th17(pTh17)細胞とよばれるサブセットやTh1メモリー応答を誘導する。Germ free(無菌)マウスや腸内細菌を抗生剤にて除菌したマウスにおいては、pTh17の誘導が顕著に低下するとともに、CTXによる抗腫瘍効果が減弱すること、pTh17細胞集団の移入によって抗腫瘍効果が増強することから、CTXが腸内細菌のdysbosisを介して誘導するpTh17細胞群が抗腫瘍免疫応答を担っていることが分かった。

 

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2014年4月1日 担当:城田 祐子

Immunity. 2014 Feb 20;40(2):199-212. doi: 10.1016/j.immuni.2013.12.014.

Autoimmune disorders associated with gain of function of the intracellular sensor MDA5.

Funabiki M, Kato H, Fujita T, et al.

担当者コメント

細胞質内センサーであるMDA5はいくつかのウイルスが感染した際に、ウイルスのdsRNAsを認識してインターフェロン(IFN)反応を誘導します。
MDA5は自己免疫に関与していることが報告されていますが、そのメカニズムは不明瞭なままです。
この論文で筆者らは、マウスにおいてMDA5が変異すると過剰な免疫応答を起こし、自己免疫疾患を誘発することを明らかにしています。
筆者らは、ENU突然変異生成によりMDA5変異マウスを確立し、ループス様の自己免疫症状を発症させました。腎症を引き起こすには、MDA5シグナル伝達経路に重要であるMAVSアダプター分子に依存しました。さらに、この変異マウスをタイプI IFN受容体欠損マウスを交配させると、臨床症状は改善するものの、依然として症状は認められました。このことからタイプIIFNとともに、NFκB依存性のサイトカインもこの症状の発症に関与していると考えられました。このMDA5変異マウスは、そのリガンドが存在しない状態でのシグナリングを活性化することができましたが、一方でリガンドおよびウイルスのdsRNAに対する応答性は不十分でした。このMDA5遺伝子変異は機能獲得型の変異であることを示唆しています。この発見は、異常な自然免疫応答が自己免疫誘発と関連性がある可能性を示しています。

 

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2014年3月25日 担当:斎藤 陽

Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Mar 10. doi:10.1073/pnas.1400065111

Mechanism governing a stem cell-generating cis-regulatory element.

Sanalkumar R, Johnson KD, Bresnick EH, et al.

担当者コメント

 組織の需要に応じて、分化した細胞を絶え間なく補充するためには、幹細胞や前駆細胞を産生し、制御する効果的なメカニズムが必要である。GATA binding protein-2 (GATA-2)を含むマスター制御性転写因子はこれらのメカニズムにおいて重要な役割を果たしているが、そのような因子が発生の動的なシステムにおいてどのように調節されているかはほとんど知られていない。著者らは既報において、-77, -3.9, -2.8, -1.8そして+9.5 GATAスイッチサイトと呼ばれる5つのGata-2 locus sequenceを報告しており、その領域には進化的に保存されたGATAモチーフが含まれ、造血前駆細胞と赤血球系細胞において、それぞれGATA-2とGATA-1が結合する。-2.8, -1.8, +9.5 サイトは、転写エンハンサーとしての共通した特徴を持ちつつも、Gata2発現と造血において異なった、かつ予測できない寄与をしていることが、その領域のtarget deletionによって明らかになった。本論文では、著者らは-3.9サイトのtarget deletionを行い、-3.9と他のGATAスイッチサイトを構造的に比較している。-3.9-/-マウスは生存可能であり、胚および成体において、正常のGata2発現と定常状態の造血を示した。著者らが確立した、Gata2 抑制/再活性化アッセイにより、GATA因子依存性にクロマチン構造の変化を媒介するという+9.5サイト独特の活性が明らかになった。Loss-of-function解析により、広範囲に転写の制御を行うLIM domain binding 1 (LDB1)と、クロマチンリモデラーであるBrahma related gene 1 (BRG1)が+9.5サイトを介して共同することで、造血幹細胞の産生と生存を促進するGATA-2の発現をもたらすというメカニズムが明らかになった。

 

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2014年3月11日 担当:小野寺 晃一

Cell. 2013 Aug 29;154(5):1112-26. doi: 10.1016/j.cell.2013.08.007.

Clonal analysis unveils self-renewing lineage-restricted progenitors generated directly from hematopoietic stem cells.

Yamamoto R, Morita Y, Nakauchi H, et al.

担当者コメント

 従来より,自己複製能と多分化能を有する造血幹細胞(hematopoietic stem cell: HSC)から自己複製能を失った多能性前駆細胞(multipotent progenitors: MPPs)が産生され,さらにMPPsから細胞系譜が決定した前駆細胞が段階的に産生されていく血球分化モデルが一般的に普及していた.本研究では,1細胞移植の系と白血球,赤血球,血小板いずれにおいても蛍光蛋白色素(Kusabira-Orange)を安定して発現するトランスジェニックマウスを用いることにより,表現型としてHSCに該当する細胞分画において,長期構築能を有する骨髄球系に限定した前駆細胞(myeloid-restricted progenitors with long-term repopulating activity: MyRPs)を発見した.娘細胞ペアアッセイと1細胞移植の系により,HSCは対称性の自己複製分裂により自身を複製するのみならず,非対称性自己複製分裂により直接MyRPを産生することがわかった.この骨髄バイパス経路は骨髄破壊的なストレスから早急に回復する際の不可欠な経路である可能性が考えられる.本研究より得られた知見は,従来から考えられていた血球分化のモデル(自己複製能の喪失と段階的な細胞系譜の決定)とは異なる,新しい血球分化モデル(骨髄球バイパス経路)を提唱するものである.

 

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2014年2月25日 担当:大西 康

Nature. 2014 Feb 9. doi: 10.1038/nature12967.

L-Myc expression by dendritic cells is required for optimal T-cell priming.

Kc W, Satpathy AT, Rapaport AS, et al.

担当者コメント

 c-Myc, N-Mycなどの転写因子は細胞増殖を制御し、胚発生に必要とされる。Mycl1は正常な胚発生には重要でない(なくてもよい)ことが知られているが、これまでその生物学的機能は不明であった。Mycl1-GFPマウスを作成したところ、免疫系では樹状細胞(DC)に選択的に発現し、IRF8によってその発現がコントロールされていることがわかった。Mycl1発現はcommon DC progenitorから始まり、それと同時にc-Myc発現が減少する。成熟DCはc-Myc, N-Myc発現を欠くが、Mycl1発現は維持される。また、Mycl1発現はGM-CSFなど、炎症性刺激存在下で維持される。Mycl1欠損マウスにおいても、全てのDCサブセットが発生するが、肺や肝臓のCD103+ conventional DCの数に減少がみられた。また、DCにおけるMycl1欠損はListeria monocytogenesやvesicular stomatitis virusなどを感染させた際のin vivo T細胞プライミングの低下を引き起こした。Mycl1発現はDCが炎症時にT細胞を適切にプライミングするうえで重要な役割を担うことが示唆される。

 

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2014年2月18日 担当:猪倉 恭子

Cell Stem Cell. 2014 Jan 15. doi: 10.1016/j.stem.2013.12.016.

Proto-Oncogenic Role of Mutant IDH2 in Leukemia Initiation and Maintenance

Kats LM, Reschke M, Taulli R, et al.

担当者コメント

 イソクエン酸脱水素酵素(isocitrate dehydrogenase-1,2 ; IDH1,2)は、クエン酸回路にあってイソクエン酸をαケトグルタル酸(α-KG)に変換する酵素である。IDH1,2の変異はAMLの約20%程に認められ、変異IDH1,2は、α-KGをさらに2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)へと変換する。2-HGは細胞内のエピジェネティックな変化やがん発生の誘因となる可能性が示唆されている。筆者らは、白血病発症、またその病態が維持されるうえで、IDH2変異がもつin vivoでの役割を検討するために、テトラサイクリン誘導性に発現されるトランスジェニックマウスIDH2R140Qを作成し解析している。R140Qは人のAMLのIDH2変異の中で最も多く認められる変異である。IDH2R140Qマウス単独では造血幹細胞や前駆細胞が増加し、髄外造血の所見が認められたが、白血病を発症することはなかった。続いて、in vivoでのさらなるIDH2変異タンパクの作用を検討する為、IDH2R140Qマウスをもとに2つの白血病モデルマウスを作成している。1つ目はIDH2R140Qマウスに白血病のホメオドメインタンパクであるHoxA9,Meis1aを過剰発現させたマウス、2つ目は受容体型チロシンキナーゼFLT3の膜近傍部の重複変異(internal tandem duplication : FLT3-ITD)を併せ持つマウスである。両マウスは白血病を発症したが、テトラサイクリンをoffとし、変異IDH2タンパクの発現を中止すると、白血病細胞の減少や消失が確認された。この結果は、変異IDH2タンパクは白血病発症に寄与し、また白血病細胞の増加や維持にも重要であることをin vivoで示しており、変異IDH2の阻害は、ヒトのAMLにおいても治療ターゲットとなりうる可能性を示唆している。

 

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2014年2月10日 担当:市川 聡

Nature Med. 2014:20;87-92. doi:10.1038/nm.3435

Pharmacological and genomic profiling identifies NF-κB-targeted treatment strategies for mantle cell lymphoma.

Rahal R, Frick M, Romero R, et al.

担当者コメント

 Mantle cell lymphoma (MCL)は進行が早く予後不良な悪性腫瘍である.筆者らは100以上の血液腫瘍由来細胞株を用いた大規模薬理学的プロファイリングにより,B細胞受容体(BCR)シグナルの阻害薬であるibrutinibとsotrastaurinに感受性の高いMCL由来細胞株の一群を同定した.高感受性MCL細胞株はBCRにより誘導された古典的NF-κBシグナル伝達系の持続的な活性化を示し,一方低感受性MCL細胞株は代替NF-κBシグナル伝達系の活性化を示した.Transcriptome sequencingにより,ibrutinib非感受性細胞株における代替NF-κBシグナル伝達経路の障害部位が明らかとなり,MCL症例由来の165サンプルのsequencingにてTRAF2あるいはBIRC3遺伝子の反復する変異が認められた.これらの異常はibrutinibに対する非感受性と関連があったが,代替NF-κBシグナル伝達の遺伝子変異はNIKという蛋白リン酸化酵素への依存性がin vivoでもin vitroでも示された.ゆえに,NIKはMCLに対する新たな治療ターゲットとなりえると考えられ,特にBCRシグナル阻害薬に抵抗性の症例において有望である可能性が想定された.今回の知見から,MCLにおけるBCR-NFκB経路あるいはNIK-NFκB経路の相互排他的な活性化のパターンが示され,NF-κB経路をターゲットとした治療を考える上での症例の層別化において重要なポイントになると考えられた.

 

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2014年2月4日 担当:井上 あい

Nature. 2014;505:641-7. doi: 10.1038/nature12968.

Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency.

Obokata H, Wakayama T, Sasai Y, et al.

担当者コメント

 この研究では、一過性の低pHという外界からの刺激誘導により1週齢のマウスから単離したリンパ球が多能性を獲得し、再プログラム化され、その結果として多能性細胞が作り出されたことを報告した。この多能性獲得をSTAP (stimulus-triggered acquisition of pluripotency)と名付けた。STAP細胞では多能性マーカー遺伝子のCpG islandのDNAのメチル化の著明な減少が見られた。STAP細胞を胚盤胞へ注入すると、キメラ胚が形成され、生殖細胞系列伝達を介して子孫も作ることができた。また、STAP細胞から増殖可能な多能性幹細胞であるSTAP Stem cellを作成可能であることも明らかにした。この研究から、運命決定されたほ乳類細胞が、強い環境刺激により明らかに転換できることを示している。

 

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2014年1月28日 担当:池田 朋子

Ann Rheum Dis. 2013 Dec;72(12):2011-7.

Autoantibodies from long-lived 'memory' plasma cells of NZB/W mice drive immune complex nephritis.

Cheng Q, Mumtaz IM, Khodadadi L, et al.

担当者コメント

SLEなどの自己免疫疾患の病因において形質細胞分泌の自己抗体は重要な役割を果たしている。

本研究では、短命形質芽球/短命形質細胞(short-lived PBs/ short-lived PCs)や長命形質細胞(long-lived PCs)が自己抗体分泌に関与しており、long-lived PCsから分泌される自己抗体が炎症の病原性であることを初めて明らかにした。

SLEでは、IFN-α、IL-21およびBLyS/ BAFFなどのサイトカインが自己反応性short-lived PBsおよびPCsを活性化し、骨髄または炎症組織において抗原刺激から独立して自己抗体分泌のlong-lived PCsに成熟する。

NZB/ Wマウスの抗体分泌細胞(ASC)をRAG1-/ - マウスへtransferすることにより抗dsDNA抗体が産生され、脾臓および骨髄においては、long-lived PCsによる持続的産生が生じた。

また、RAG1-/-マウスにおける尿タンパクの増加や腎臓の免疫組織学的変化(IgG、IgM、C1q、C3の沈着)は、NZB / Wマウス由来ASC transfer RAG1-/-マウスで認められた。

したがって、RAG1欠損マウスにNZB / Wマウス由来のASCをtransferすることにより、骨髄や脾臓においてlong-lived PCの自己抗体分泌が惹起され、自己抗体媒介性炎症を引き起こした。

このメカニズムは、自己反応性short-lived PBsおよびPCsにより促進される炎症プロセスからは独立しており、抗増殖性薬剤およびB細胞標的治療薬では治療抵抗性である。自己反応性long-lived PCsでは、これらの治療法に対して難治性であり、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブによる処理がNZB/ WおよびMRL/ lprマウスにおけるPCsの選択的除去が可能である。そして、ループス腎炎を改善または阻止することにより、生存期間の延長が可能となるため、自己抗体媒介性疾患の将来の治療戦略について検討すべきであるということが示唆された。

 

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2014年1月14日 担当:渡部 龍

Nat Med. 2014 Jan;20(1):62-68.

Pathogenic conversion of Foxp3+ T cells into TH17 cells in autoimmune arthritis

Komatsu N, Okamoto K, Sawa S, et al.

担当者コメント

 Foxp3を発現する制御性T細胞(Treg)は,免疫反応の抑制に重要な役割を果たしており,Foxp3欠損マウスでは,致死的な自己免疫現象が起きることが知られている.しかし,近年,Foxp3+ Tregの可塑性(Th17へのconversion)が議論となっている.Foxp3+ T細胞は,1) Foxp3-stable CD25 hiと,2) Foxp3-unstable CD25 loの2群から成り,1) が真のTregと考えられているが,2)の意義は,明らかではない. 本研究では,2)のFoxp3-unstable CD25 lo T細胞が,自己免疫性関節炎(autoimmune arthritis)モデルにおいて,Foxp3の発現を失い,IL-17を産生するTh17(exFoxp3 Th17細胞)にconversionし,これが関節炎を起こす中心的役割を有することが明らかになった. また,滑膜細胞が産生するIL-6によりそのconversionが促進されることも明らかになった.本研究は,自己免疫性関節炎において,exFoxp3 Th17細胞が新たな治療標的となる可能性を示唆している.

 

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2014年1月7日 担当:藤原 亨

Cell Stem Cell. 2013;13:459-470.

Induction of multipotential hematopoietic progenitors from human pluripotent stem cells via respecification of lineage-restricted precursors.

Doulatov S, Vo LT, Chou SS, et al.

担当者コメント

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、ES細胞(胚性幹細胞)と同様に非常に多くの細胞に分化できる分化万能性を有しており、再生医療をはじめとして近年多くの分野で注目されている。血液疾患においても、様々な疾患特異的iPSが樹立されつつあり、その病因・発症メカニズムの解明や薬剤の効果・毒性を評価などへの応用が期待されている。しかし、現時点ではiPS細胞(およびES細胞)から移植可能なヒト造血幹細胞への誘導及びその増幅が困難であったため、これまでの研究はin vitroにおける解析が中心であった。
 今回の研究では、転写因子の導入によるES細胞由来のCD34+CD45+前駆細胞の”Respecification”に着目し、これまで報告されたマイクロアレイデータを元にERG、HOXA9、RORAの3つが未分化性の維持に重要であることを明らかにした。さらに、免疫不全マウスへの生着にはSOX4とMYBを加えた5つの因子が重要であることを明らかにした。ES細胞及びiPS細胞由来の赤芽球は、in vitroにおける誘導では胎児型グロビン(ε、γ)のみしか産生されないが、マウスへの移植後に生着した赤芽球は一部成人型(β)グロビンへのスイッチが促される点も興味深い。
 今後の課題として、長期にわたる生着を可能にする手法、リンパ球系への効率的な分化誘導法の開発などいくつか挙げられるが、本研究の意義は大きいと思われる。

 

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