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イベント

血液免疫病学セミナー2018

第13回血液免疫病学セミナー報告

 今年も平成30年11月3・4日(土・日)の2日間,秋保温泉ホテルニュー水戸屋にて恒例の「血液免疫病学セミナー」を開催させて頂きました.他の行事等であいにく参加出来ない旨のご連絡もいくつか頂いていたものの,例年同様に研修医,医学部5・6年生,看護師,そして当科スタッフを含む総勢60名弱の方々に参加して頂きました.今年も皆様のご協力で滞りなく準備が進み,スムーズなセミナー運営ができたのではないかと思います.今年は「Micro, macro, and kaleidoscopic 〜多彩な視点から考える血液免疫病学〜」をスローガンとして,日常診療において役立つ血液免疫病の知識から,印象に残る症例の体験談まで,様々な視点から講義とカンファレンスを織り交ぜてセミナーを進行しました.

 オープニングはクイズを主体とした「Clinical pearls」セクションですが,まず血液グループに今年入局した川尻先生から,「血液クイズ」と題して,日常診療で出会うことのある各種血液疾患の病態や臨床経過について,血液像や骨髄像などを見ながら答えるクイズを出題しました.続いて,免疫グループ今年入局の岡崎先生と矢坂先生から,「免疫クイズ」と題して,各種自己免疫疾患で見られる皮膚所見やレントゲン写真などの画像データを見ながら診断などを考える問題を出題しました.とくに矢坂先生のセクションでは,関節リウマチやグロブリン製剤の歴史的な背景を織り交ぜての解説があり,スタッフもともに興味深く聞いていました.

 続いて,ここ数年行っている「Case conference」のセクションですが,4つのグループに分かれてグループディスカッションを行ってもらいました.例年,典型的な症例についてはすぐに答えが分かってしまうため,経過や診断に意外性があったりする難易度の高い症例を選ぶようになっていることもあり,今年も”heavy”なセクションになったようです.1例目は血液グループの齊藤慧先生がプレゼンターをつとめ,「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のように発症し,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断に至った症例」を提示しました.(難治性)ITPの経過から,LDH上昇などを契機にリンパ腫をはじめとする背景疾患の存在を疑う方向性については,みな共通して考えられており,今年の参加者のレベルの高さをあらためて感じました.2例目は星先生と市川がプレゼンターをつとめ,「呼吸不全を伴って発症した多発性筋炎からDLBCLの診断に至った症例」について扱い,多発性筋炎発症の経過,そしてCO2ナルコーシスを合併した経緯など,いわゆる内科的に重要なエッセンスを考察してもらえたと思います(最後のDLBCLの経過はおまけでした).3例目は血液グループ今年入局の中川先生と免疫グループの白井先生がプレセンターとなり,「ITPとして発症したが,微小な脳出血をきたし,脳MRIで動脈瘤も指摘され,精神神経ループス(NPSLE)の診断に至った症例」について扱いました.NPSLEの診断については血清学的に診断が確定するものではなく,ある種特異性の低い所見と経過との連関から診断の蓋然性を高めて治療に結びつけていくという,いわば自己免疫疾患の専門性の高い側面にスポットをあてた症例提示となりました.参加者アンケートを見てもかなり難しい印象を持った人が多かったようですが,そのなかでも考察すべきところはみな考察できていたようでした.

 例年,最後のセクションは「Meet the expert」と題して,専門家からの血液免疫病診療・研究の最前線の情報提供をしていましたが,今年は「Impressive cases」と題して,血液グループ,免疫グループ各4名ずつの先生方から,今風に言えば「インスタ映えする」ような,治療経過を見て分かりやすい症例の提示をして,血液疾患・免疫疾患のダイナミックな経過から醍醐味を味わって頂こうというセクションを準備しました.血液グループからは,「難治性多発性骨髄腫の治療中に出現した巨大な膵腫瘍(古川先生,市川)」,「巨大肝脾腫で受診した慢性骨髄性白血病(CML)の1例(佐野先生)」,「最重症再生不良性貧血に対して同種骨髄移植を施行後,リンパ腫を合併したが化学療法が著効した一例(小野寺先生)」,「Numb Chin Syndromeを来たしたDLBCLの1例(市川)」の4例,免疫グループからは「予防していたがニューモシスチス肺炎を発症した1例(岡崎先生)」,「関節リウマチに合併した多発性筋炎の1例(永井先生)」,「多発血管炎性肉芽腫症の経過で頭蓋底に腫瘤性病変を生じた1例(藤田先生)」,「一過性脳虚血様発作の原因精査中に口の渇きを訴えから自己免疫疾患の診断に至り治療が奏効した1例(藤井先生)」の4例の提示を行いました.それぞれの提示がみな個性的で,症例も印象的なものが多く,参加者の脳裏にしっかりと刻まれたようで,アンケートでも好評を頂いたセクションとなりました.

 最後に張替教授から,当科での同種造血幹細胞移植の黎明期のお話がありました.色々な準備が必要となり重篤な治療関連毒性も多く,今でも大変な移植医療ですが,約30年前の当時は今からは想像もつかないほどに非常に大変な治療であったと言うお話は,我々にとってもある意味ショッキングであり,「治療を受ける側にとっても治療を行う側にとってもつらい治療だった」と仰っていた一言には重みがありました.医学はいつもその時代の高みを目指しており,その試行錯誤の延長線上に現在の医療があるということを実感し,先達の諸先輩方への敬意を新たにしました.

 その後の夕食,懇親会では石井悠翔先生の司会のもと,恒例の人名ビンゴゲームが行われ,今年も豪華賞品の贈呈とともに大いに盛り上がりました.二次会では今年も山形市立病院済生館の木村先生から美味しい差し入れを頂きながら,例年にも増して多くの研修医,学生,看護師の皆さんが集まり,楽しく懇談ができました.

 おかげさまをもちまして,第13回血液免疫病学セミナーも充実した内容となり,大きなトラブルもなく無事終えることが出来ました.アンケートを見ても概ね好評を頂いており,成功裏に終えることができたと思います.参加して頂いた皆様,そして準備,進行に携わって頂いた医局員・スタッフの皆様にこの場をお借りして深く感謝いたします.そして来年以降も充実したセミナーを企画していきたいと考えておりますので,皆様の御協力を頂ければ幸いです.本セミナーは東北地方における血液・免疫疾患診療を若い先生方に啓蒙しそのレベルアップを目的としており,今後も微力ながらそのお役に立てればと思いますので,今後とも御指導御鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます.

文責 市川 聡