写真  トップページ   写真  医局員専用   写真  サイトマップ

 

 

写真

写真
TOPリレーエッセイ > 第5回

リレーエッセイ

「リレーで渡すもの」 小林 匡洋

 他分野の同期の医師からも、「なんでそんなに休みないの」と言われる血液免疫学での診療や研究。自分はそこまでと思わないが、頑張る理由の一つは、得られる成果や印象深く響くような体験かもしれない。

 高校までグランドホッケー部だった。厳しく練習する先輩についていけず辞める者が多く出た。当時、PKOが話題で、派遣の方が楽だという冗談もあった。厳しい練習の結果、驚いたことに、例年は大敗した強豪校と接戦、ついに勝利した。「スラムダンク」のようであった。それを目の当たりにした者は部活に残った。厳しいだけでもいけない難しさ、後に分かる得られるものは伝えきれない。糧になる感動の体験がないことは、かわいそうとさえ思えた。何かの本で、「言わないと分からないようなことは、言っても分からない。」とあった。先輩もそんなことを言っていた。 体験を後輩に受け渡すのだと言った。

 自分は当初、血液疾患を苦手と感じた。しかし、分子標的薬や移植で、驚きの成果を体験した。患者さんとご家族の笑顔も見た。それでもまだ基礎研究での謎は果てしない。自分は学部生時代に実験の経験が乏しく、大学院では基礎研究が苦手と思いながらも、なんとか取り組んだ。「この道を行けばどうなるものか」の連続だった。 最も印象深い体験は、成果とまでいかないが、「第19回 血液科学セミナー」だった。発表に対し、全国の先生から今まで体験したことのない量の質問が続いた。頑張りの蓄積が、聴衆の先生方に響いたと感じ、なぜか質疑応答の最中に、この上ないうれしいことに思えた。「言わないと分からない・・・」かもしれない。血液関連の先輩方は、強敵に挑む姿などは「坂の上の雲」、仙台に関連すれば「青葉繁れる」の先人や先生のイメージだ。大船に乗ったつもりで、診療や研究に没頭でき、感謝している。苦手でも、病気とぶつかって「迷わず行けば」分かってくるものがある。成果とならなくても、松陰先生の「身はたとひ」のように思えればうれしい。自分は先輩の体験を受け継いでいけるか、後輩に受け渡せるのだろうかと思った。